相続法が改正されるのが決まりましたね。
映画やドラマの中の話だけではなく、現実にも「争族(そうぞく)」と言われるような事が起きています。
家族や兄弟が争うなんて、亡くなった人は望んでいないはずです!
そんな相続問題をなくす為・又、時代に沿ったものとなるように、相続法が改正されるのです。
2018年7月に相続法の改正法が成立され、2019年1月より2020年7月までに順次改正をすすめていくそうですが、今回の相続法改正で大きく変わる内容が次の5つです。
- 配偶者居住権
- 遺産分割
- 遺言
- 遺留分
- 特別寄与料(介護)
この中でも特に注目するポイントが
配偶者・介護貢献
この2点についてですね。
まずは、相続法改正のトップランナーとなる遺言について、分かりやすく説明していきますね!
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相続法改正で遺言はどう変わる?
遺言書が有るかどうかは、相続人など残された家族にとって一喜一憂する重要な事柄ですね。
法律で決められた相続人。いわゆる法定相続人には順位があり、それぞれについて法定相続分が決まっているのです。
通常はそれに従って遺産分割協議を行います。
遺産分割協議というのは、法定相続人全員で「誰にいくらづつ分けるか」を決めて書面にし、全員の署名を必要とするものです。
遺産分割協議でよく問題となるのが、「新たな子どもの発覚」と「音信不通者」です。
役所へ届けを提出する際に「戸籍謄本」を取り寄せますが、そこに以前の婚姻相手や子ども等が記載されているのですが、「この時に初めて知った」という事も少なからずあるようです。
遺産分割協議は、相続人全員の署名が必要なので、行方を捜すのに何か月・何年も掛かることもあり、その間は勿論、相続ももらえません。
でも、遺言書があれば、相続人の順位も遺産分割協議も関係なく、遺言書が優先順位が一番です。ただ、「遺留分」として、一定の範囲の法定相続人にだけ、最低限の遺産取得分が認められるのです。
遺留分は、「法定相続分の半分ほど」となるので、一円でも多くもらいたい相続人たちは、必死になるのです。
そこで、争いの元となり得る「遺言書」ですが、どこに保管するのが一番安全でしょうか?
自宅の金庫や銀行の貸金庫、又、よくあるのが弁護士が保管するケースですね。
しかし、紛失したり発見されなかったり、最悪、相続人によって破棄・改ざんされたりするケースもあったため
自筆遺言は法務局で保管
することとなったのです。この為、本来家庭裁判所で検認が必要であったものが、不要となったのです。
法務局での保管の流れ
- 遺言者の住所地・本籍地・所有不動産を管轄する法務局のいずれかに提出
- 保管官が、震災時に形式をチェック・不備の指摘
- 原本のデータ化(PDF化)
- 存命中は、本人以外には開示されない
- 死亡後、相続人の一人から請求があれば、写しの交付・閲覧も可能となる
- 他の相続人にも通知される
もし、遺言の改ざんや破棄を行うと、遺言書を偽造した人は相続欠格となり、相続人ではなくなります。私文書偽造罪・変造罪にも問われて刑法でも罰を受けるので絶対やめましょう
遺言の作成方法も改正
保管方法が変わるとお伝えしましたが、実は、作成方法も大きく変わるのです。
これは、財産をたくさんお持ちの方にはありがたい内容ですね!
今までは、自筆遺言の財産目録は手書きしか駄目でした。
そのため、不動産一つをとっても、土地・建物それぞれについて
- 所在地
- 地番
- 地目
- 地籍・床面積
- 名義、評価
- その不動産の現状
これらの詳細情報を、記載しなくてはならなかったのです。
株券や絵画、宝石なども、鑑定してもらい一つづつ記載する必要があったのです。
でも、2019年1月13日より
自筆遺言の財産目録をパソコンで作成可能
となったのです。
通帳のコピーや、不動産登記事項証明書を目録として添付したりする事も可能です。
注意事項として、
などの様に、表題を作成し、別紙全てに記名押印が必要となります。
財産の多い資産家の人たちにとって、パソコンでの作成が可能となれば、とても楽になりますね。
相続法改正のポイントは配偶者
今回新民法として登場したのが
配偶者居住権
これは、旦那さんが亡くなったあとも、家に住み続けることができる権利です。
忘れてはいけないのが、法務局への登記です。
この配偶者居住権には2つのタイプがあります。
配偶者短期居住権
これは、旦那さんが遺言で自宅を第三者に遺贈していても、妻は追い出されずに一定期間(最長6ヶ月)は住み続けることができるのです。
この6ヶ月の間に、引越し先を探すことが出来ます。
万が一、遺言書を残していたなかった場合は、法定相続により遺産分割協議が決まるまでの間、最長6ヶ月は無料で住み続ける事ができるのです。
配偶者居住権
これは、遺言で旦那さんが記載しておくか、遺産分割協議で他の相続人が認めなければなりません。
期間の定めがなく、一生無料で家の住み続けることができるのです。
この配偶者居住権は、
- 譲渡出来ない
- 妻が亡くなるまで
- 妻が放棄するまで
もし、残された相続人が施設に入ることとなっても、登記された居住権は消えませんので、いつ配偶者居住権をもつ相続人が帰ってきても良いようにする必要があります。
「改築費」「固定資産税」は所有者となる相続人が支払う義務があります。
配偶者居住権を持つ人は「修繕積立金」「維持費」を支払う義務があります。
もし所有者(負担付所有権)が売却や、差し押さえとなった場合でも、対抗して住み続けられるのです。
この法律は、遺産分割協議によって家を売るしか方法が無かった場合に、今まで住む場所がなくなってしまっていた配偶者の救済のための法律です。
もちろん、後妻であっても配偶者居住権で住み続けられるのです。
相続した不動産の所有者は、売却することは可能です。
ただし配偶者が生きている間は、配偶者が権利を放棄しない限り、第三者に所有権が渡ろうが、居住権によって住み続ける事ができるのです。
相続法改正のポイントは介護支援者
特別寄与料によって、親身に介護をしていたことが報われるのです!
今までは相続権が無かったため、「長男の嫁」がどれほど尽くしても一円ももらえなかったのですが、改正後は請求することができるのです。
相続人以外の親族が対象となります。
- 6親等内の血族、配偶者
- 4親等内の姻族
このため、「愛人」「同居人」などは、請求権は認められないので気を付けましょう!
特別寄与料の注意点
どれほど親身に介護をしても、介護や貢献度を数字で表すのは大変です。
その為にも、日頃から
- 介護日記の記載
- 介護事業者との文面(メール・LINE)
- 介護に要した領収書
これらの物を、きちんと残しておきましょう。日記などについては、視覚が大切なので、冊数も多くインパクトが多いほど「貢献度が高い」とみなされることもあるので、古い日記もきちんとおいておきましょう。
特別寄与料の算出方法
特別寄与料を決めるために、介護日記などで介護をした日数を算出します。
日当×介護日数
この計算式を使いますが、ヘルパーさんに頼んだ場合、5時間で9,000円ほどになります。
でも家族なので一定の扶養義務はあります。一日中介護をしていたからといって、時給計算をして日当が高くなるという事は無いのです。
特別寄与料の条件
更に、特別寄与料を、相続人全員に請求する必要があるのですが、要介護2 期間は一年です。
無償の労務提供が条件となっているので、ヘルパーさんがどれほど親身に世話をしてくれても、既に手当や手数料を支払っている為、特別寄与料は請求できません。
相続法改正で熟年夫婦の特権!
長年連れ添った夫婦のための改正です。
今までは、贈与があってもなくても、「遺産の先渡し」として相続財産に含まれていたのです。
その為、遺産分割協議での家の価値は、結婚して20年以上経つ夫婦の場合、遺産分割の対象から住み慣れた家が除外されるのです!!!
これは、
生前贈与・遺贈
することが必要ですが、奥さんの為に住み慣れた家を確保してあげましょう。
相続法改正スケジュール
今回改正される相続法の内容は、直ぐに施行開始されるものから、時間を掛けて中身を詰めていき、2020年7月までに順次施行を目指しているものがあります。
遺言や配偶者居住権など全ての項目を①~⑩にわけて、それぞれの施行スケジュールを見てみましょう。
2019年1月~
①自筆遺言の財産目録をパソコンで作成可能に
2019年7月までに
②婚姻20年以上で贈与・遺贈された自宅は、遺産分割の対象外に
③遺産分割前に、預貯金の一部を引き出すことが可能に
④相続開始後に遺産を使い込んだ相続人がいても、後で公平に
⑤不動産の差押登記は、遺言内容よりも優先
⑥不公平な遺言に対し、遺留分を金銭で支払わせることが可能に
⑦介護した相続権のない親族による金銭請求が可能に
2020年7月までに
⑧配偶者短期居住権を新設
⑨配偶者居住権を新設
⑩自筆証書遺言を法務局で保管
今回は便宜上、旦那さんが亡くなった場合で、お子さん一人をモデルケースとして説明していますが、相続法はまだ施行前なので、これから色々と修正点がでてくると思います。
弁護士法人・司法書士法人・行政書士法人・税理士法人などの専門家や、相続手続きカウンセラーに相談して手続きをすすめていく必要があります。